佐賀新聞掲載コラム日だまり-P8

■山口亮一記念館開館  掲載日2005.11.08

 十月二十二、二十三日に、佐賀市与賀町にある山口亮一記念館が約十年ぶりに開館された。  この建物は、白石町須古から与賀町に移築された武家屋敷で、築二百五十年といわれている。老朽化が激しく、解体の危機にあったが、市の委託でNPOまちづくり研究所が改修を行い今回の開館に至った。  二十二日は、山口画伯の作品展示と、五つのまちづくり代表者と佐賀大学から三島、後藤両氏を招いてのまちづくり座談会が行われた。  二十三日には、左官職人田崎氏の指導によるワークショップが行われた。  また、両日とも磯谷聖翠氏による演奏で、篠笛(しのぶえ)の音が歴史ある和の空間に響き渡る印象深い開館であった。  あらためて、縁側に座りこの空間を眺めると、奥の間に見える松の曲がりくねった梁(はり)、座敷縁側の桁(けた)と垂木の丸太など自然の造形が印象深い。  昔の物づくりは、手間を掛け自然な造形に人が合わせることが当たり前であったが、現在は、自然な造形を人工的に作り変え、効率的に物をつくるように変わった。  二度と再現することのできない先人から受け継いだ貴重な佐賀の遺産である山口亮一記念館を、多くの人に見ていただいた両日だった。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)

■地球温暖化防止活動  掲載日2005.12.09

 今、地球がおかしい。地球温暖化に起因すると思われる異常現象が、地球上の至る所で起こっている。
 今年三月に、県地球温暖化防止活動推進センター指定団体として、「NPOさが環境推進センター」が県から認定された。
 同センターは、地球温暖化防止対策の普及啓発の拠点となる組織である。ここが主催する環境教育連絡会議に出席し、幾つか分かったことがある。
 一つは、すぐ目前にエネルギー危機が迫っていること。そして、既に地球環境の変化が進んでいる事実だ。海と陸の生態系が変化し、熱帯地域でしか見られなかったウイルスによる感染症が都市部で発生したり、大型の洪水、台風など思いもかけない災害等が頻繁に起きている。
 もう一つは、この危機的状況を乗り越えるのに最も必要なのが、普通に暮らしている私たち生活者の自覚なのだということである。大量消費型の生活からゴミを出さないリユース、リサイクル型の生活に変えることが、今必要なのだ。
 行政が税金を費やし燃やしている生ゴミを生物資源(バイオマス)として活用することは、そのまま地球温暖化防止に繋(つな)がることである。
 そんな環境循環システムに市民レベルで取り組む「NPOはちがめプラン」のある県は、日本のバイオマス先進地であり地球温暖化防止先進地のはずなのだが、なぜか抵抗も多いそうである。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)

■さがルネッサンス構想  掲載日2006.1.10

 山口亮一記念館を拠点に?さがルネッサンス構想?が、現在進行中で今年春にNPO法人化される。
 NPOまちづくり研究所が、中間支援的な役割を担い、佐賀での文化的活動に理解ある人々で記念館開館に協力いただいた人を中心に、十五人程度で組織化しようとしている。
 佐賀の景観の中には、築百年を超える文化財級の建築物が、まだたくさん存在しているのに、その価値に多くの人が気付いていないのと同様、世界レベルで活躍できる質の高い創作活動や、文化活動をされている人たちがこの佐賀に住んでいるのに、佐賀の人は知らないことが多い。
 知らないと言うより、普通に生活していて、知る機会が少ないのと、もう一つは、生活して行くのに直接的にかかわりのない文化的な活動を今まで、経済界や行政が支援しようとしなかった結果かもしれない。
 有名になりたい人は、佐賀には住まない。佐賀に暮らし、自分に正直に質の高い創作活動や文化活動をしている人の中には、卓越した人が存在する。過去にも驚くほどすごい人たちがいた。
 佐賀では、あまり取り上げられないそんな人たちや活動を支援し、スポットライトを当てるため、このNPOが立ち上がる意義は大きい。今年は、佐賀の存在が大きく変わりそうな予感がする。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)

■建築と地域の景観  掲載日2006.02.07

 本来、建築は土地の気候風土、歴史文化をベースとして建てられるべきものであろう。
 戦後、建築は耐震性能、安全性やライフラインを守る現代技術の成果として位置づけられ造られてきた。
 その結果、建築に最も大切な文化的な要素が切り捨てられ、地域の歴史や気候風土、伝統技術といった最も大切な文化面が欠落し、日本の美意識とか地域の豊かさみたいなものが景観から無くなってきているようである。
 昔の木造建築物は、百年以上たったものが今でも数多く残っている。しかしながら、その建物を維持することが困難になり、取り壊され、駐車場もしくは三十年程度の寿命の現代建築に変わってしまう。
 行政が行う都市計画は、本来百年単位で地域をどのようにしたいのか、大きなビジョンを踏まえて都市政策に取り組むことが必要である。そのためには、技術屋だけに委ねる縦割り土木建築行政でなく、歴史文化を踏まえた政策的なコラボレーションは絶対に必要であろう。
 技術屋の技術屋による性善説にのっとった土木建築行政が、構造計算偽造問題に発展し、日本中が大騒ぎになった一因かもしれない。技術以外にも大切なものがあるのでは。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)