佐賀新聞掲載コラム日だまり-P4
■ 道路拡張で変る景観 掲載日2004.10.19
佐賀の至る所で道路拡張工事により街並が変貌している。何の脈略もなく、使う材料も色、形、高さもバラバラの建物が並び、通るだけで具合が悪くなると言う人もいる。
街並は、そこに住む人達の文化の現れと言われてもしょうがない。何処も同じような街並で、地域性や住んでいる人達の心意気等が全く反映されていないのは何故だろう。
建築工事や土木工事では日常、実質的機能評価が完璧に近い程、行われている。その反面、不真面目と思われがちな遊び心、生活を粋に楽しむ心みたいな事を多くの人達が置き去りにしてきた。実は、それは人が生きていく上で大切な事ではなかっただろうか。現代の街並や都市景観にその結果が現れているような気がする。
そんな芸術性やデザイン性と言った事は、ものに対する深い思想から発する事で、にわか芸術やデザインではすまされない。同時にその判断基準の難しい事も否めない。いずれにせよ街の景観をよくするためには、利用者である市民が自ら考えアクションを起こす事が必要であろう。どうせ整備され変るなら、より楽しい街並に、美しい街並に変って欲しいと思う。 (アルフデザイン代表 三原宏樹)
■ネットオークション 掲載日2004.09.14
突然の出来事である。何時も何気なく使っていたパソコンが動かない。5年以上も毎日仕事場で共に働いていた相棒でありショックは大きい。ハードディスクが壊れたようだ。慌てて近くのショップへ相談に行くと「こんな古いパソコンにあうハードディスクは製造されてない、中古を探して付けるしかない」と店の人に突き放される。県外の専門ショップへ電話するがそこでも突き放され、途方にくれる。
そうして初めてインターネットオークションなるものを経験した。探し求める旧式の未使用ハードディスクが最低価格2千円で出品されていた。誰も入札していなかったので恐る恐る2千円で入札したら落札してしまった。半信半疑のまま、その後送られてきたものにソフトをインストール、動かないパソコンに繋いだら動いた。すごく感動した。
調子にのって、旧式の未使用マウス等色々買った。これらも掘り出し物である。再度感激する。今までインターネットで買い物する事に抵抗と疑いを持っていた。偶々かもしれないがインターネットで救われる事もあると実感した。 (アルフデザイン代表 三原宏樹)
■ HACCP 掲載日2004.08.17
一流コックの美味しい料理が食べられるという誘いにつられ九州電力主催のHACCP講習会へ出かけた。HACCPとは、NASA宇宙開発の宇宙食製造管理システムから発しているらしく、安全な食べ物を提供する為、食材が産地から人の口に入るまでの過程で考えられるあらゆる危険を明確にし抑制するための監理記録システムである。
ここでは一流コックの味に対する経験や勘等のスキルが全て科学的に検証され数値化されて、食材は温度と時間によって管理、加工されるのである。火を使わず、ほとんどの料理が電気制御によるスチームコンベクションオーブンで加熱されるだけ。焼く、炒める、煮る、蒸す、揚げる等の料理の特徴は温度と時間によって創り出せるというのである。
熱効率は火を使うより5倍以上、調理室の室温を上昇させる要素は無くなり省エネルギーでしかも調理室は清潔、安全だと言う。心の中では所詮火を使わない蒸し料理と馬鹿にしていた。出てきた料理を食べてみると火を使っていないとは思えない。見た目も綺麗で美味しい。料理に対する概念が覆された貴重な経験であった。 (アルフデザイン代表 三原宏樹)
■古い建物の価値 掲載日2004.07.20
日本独特の建築技術が進歩し、燃え難い耐久性に優れた建材が数多く開発され、日本中のどこに行っても、同種の材料、乾式工法で覆われた建物で構成される街並みに遭遇する。所々に残る古い民家や建物が余計に魅力的に映る昨今である。先日、佐賀市に寄贈された、与賀町にある旧山口亮一邸の内部を見せていただいた。
この建物は、築二百年を超えるかやぶきクド造りの民家である。残念なことに、内部も外部も白アリによる損傷が激しい。佐賀市の方から、県外のある学者が、建物としての歴史的な価値はないと評価されたと伺った。私は、歴史的価値うんぬんと言うより、魅力的な建築物だと素直に感じた。
佐賀城本丸歴史館には、多くの予算が使われ再現された。しかしこれは、しょせんフェイク(偽物)である。旧山口邸の建物は、二百年以上の歴史を佐賀のこの場所で経験した本物である。そこには、歴史的風格があり、その当時の、伝統技術を受けついだ人々の思いが伝わってくる迫力がある。ぜひこの価値を理解していただき、存続利用をできる方法はないものだろうか。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)
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