佐賀新聞掲載コラム日だまり-P9

■家づくり  掲載日2006.03.07

 先日、北九州市建築都市局区画整理課主催の「住宅セミナー」で家づくりについて話す機会をいただいた。そして建てる側の大変さを痛感した。  家づくりの手法は大きく三つに分かれる。一つはハウスメーカーに依頼する。一つは地域の工務店に依頼する。一つは建築家に依頼する―である。建築士に依頼するは、前者の工務店へ依頼すると同様とした。  建築士と建築家の定義がないので、その違いを独断で定義すると、建築家とは資格取得した後、さまざまな経験を積み「住環境」に対して、深い思想を有し、さらなる豊富な知識を蓄えていること。特定の企業に属せず独立した立場にいることなどであろう。しかし、建築家という制度が日本にはないため自己申告による怪しい存在にもつながっている。  建築家が介在しなくても建物は建つし、自分にあったパートナーとしての建築家選びが最も重要なのに難しく、かなりのエネルギーが必要であることもあって、建築家との家づくりを選択されるのはごく少数派である。  自分の生命財産を守るのに、自己責任が問われるようになった今、安全で安心できる快適な住まいを得るには、もっと住宅について知ることが必要な社会環境なのであろう。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)

■座敷でライブ  掲載日2006.04.04

 「山口亮一画伯とその家族展」が、三月十八日から二十六日まで山口亮一旧宅で行われた。
 開期中に数回の演奏会が開かれ、十八日は久原興民氏のビオラと馬場理津子氏のピアノによる演奏。二十一日には、橋川亮氏のシンセサイザーと磯谷聖翠氏の室町時代の篠笛(しのぶえ)による演奏などが行われた。
 会場の旧宅は江戸後期の武家屋敷で、聴衆は畳に座り、演奏者は椅子(いす)に座っての向かい合わせで、聞く側が勝手に練習に立ち会っているような少し不思議な光景だった。
 残響も少なく、聴衆の半分が正座しておられ、演奏はやりにくかったと思われる。しかし聞いている側にとっては、建物全体が楽器のような響きに包まれ、なかなか心地よい体験であった。
 質の高い演奏を歴史的建造物の座敷で聞きながら、これがまさに佐賀らしい光景だと勝手に納得した。
 お客さまの反応もよく、ぜひ定期的に行ってほしいとの要望が多かった。演奏者へそのことを伝え、山口亮一旧宅での定期演奏を快く承諾していただいた。
 この「座敷でライブ」が佐賀に残る江戸後期武家屋敷の名物イベントの一つになれば面白い。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)

■中心市街地の再生  掲載日2006.05.02

 中心市街地に賑(にぎ)わいを取り戻そうと世の中が動きだしている。一方では、もう佐賀に中心市街地は必要ないと言い切る人も多い。
 高速を飛ばせば福岡まで一時間足らずで着いてしまう。けた違いの経済活力と若者が集まる人口百三十万の大都市福岡はすぐ隣にある。商業による集客力は、かなうはずもない。しかし佐賀の中心がなくなってしまうのは、寂しいかぎりである。
 中心がなくなることは、佐賀市そのものがなくなるに等しい思いもある。中高層ビルの立ち並ぶコンクリートの町よりも木造二階程度の高さで、狭い路地のある町のほうが私には心地よい。町中に幾つもの小さな川が流れ、奇麗に整備され、あとは賑わいがあれば、佐賀の中心地もなかなか捨てたものではない。
 佐賀には美人が多いと県外の男性からよく聞く。また人気のある飲食店には必ず女性客が多い。女性が歩きたくなる中心市街地になれば賑わいは取り戻せるかもしれない。
 一見つまらなく思える事でも、こだわりを持って丁寧にまとめ上げる事が重要で、美味(おい)しいものや美しいものが沢山(たくさん)あって、しかも本物志向。そんな繊細で文化色豊かな中心市街地に佐賀をぜひ再生させたい。

(アルフデザイン代表 三原宏樹)

■市民活動2006  掲載日2006.05.30

 市民活動支援事業に、佐賀県主催のほのお博記念地域活性化事業がある。その地域づくり活動部門では、今年も公開プレゼンテーションが行われ、県内全域から五十団体の枠を争い八十四団体が参加した。
 今年は食育、子育て支援など、子どもの健全育成に関するものや環境保全、防災に関するものが多かった。演劇や音楽活動などの文化活動も多く、毎年、市民活動の幅が広がっている。
 市民活動の成り立ちから考えると、社会で生活していく中で問題や矛盾を感じ、必要に迫られ、自分たちの手でなんとかしようと有志が集まり、組織化し、社会問題に立ち向かおうとする団体がある。
 不登校、ひきこもり、非行など不適応問題を抱える子どもたちの多くは、学校教育の現場からはじきだされ、就労支援も自立支援も行政からは受けられない、まさに社会の隙間(すきま)に位置している。そんな人たちを市民の手で何とか助けようとするNPO組織が、毎年多くのお金を自分たちで出し合って維持している事を聞いた。
 今回支援を受けた団体の中に認知症について語る会、盲導犬育成支援の会、難聴者中途失聴者協会など印象深かった。この支援事業の意義は、支給される金額よりも市民活動を行っている人たちの励みに繋(つな)がる事にあると思う。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)