佐賀新聞掲載コラム日だまり-P7

■コスト意識と談合問題  掲載日2005.07.12

 道路公団や橋梁きょうりょう談合等公共工事における発注者を巻き込んだ談合問題がクローズアップされている。
 談合とは、競争を好まず和を尊ぶ社会構造で、業界全体が潤うために自然発生的に生まれたシステムなのであろう。昭和の高度成長期には、人手と物が不足し公共工事を遂行するために調整は必要だったという。
 終身雇用でみんなが中流意識を持ち、誰もが豊かに暮らせた時代には、必要悪ともいわれ黙認され続けてきた。いつの間にか世の中が厳しくなり、設備投資も冷え込み、気がつけば市内の老舗建設会社が幾つも消えてしまっている。
 コスト優先で海外から安い農産物や加工製品がどんどん入り、国際的にも日本は世界から孤立しはじめているような状況の中、社会全体がコストに異常なほど敏感になっているようだ。
 建設談合は悪いとしても、コスト論だけで善悪を判断するのは疑問である。地域の産業が活性化し、そこに従事する人たちが潤い、みんなが喜んで税を納められるような社会構造の変革も同じに考えていく必要があるのではないだろうか。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)

■ゴミと資源  掲載日2005.08.09

 佐賀市環境センター内にエコプラザがある。何度かボランティアでお手伝いに行く機会があった。プラザ内にはさまざまなたくさんの?物?が展示してある。分類化されきれいに並べてあるのだが、それらはすべてゴミだったと聞いて驚いた。
 例えば、黒い布の上に大きさの同じくらいの陶器の器が複数、美術品のように展示されている。また、大きな瓶の中にたくさんのボタン類が分類され、納まっている。そこには、服、家具、楽器や自転車までさまざまの物が展示され、よく見ると値札がついている。元はゴミであるが、すべて売り物の商品となっている。 施設を訪れた人たちがそれらの?物?を争うように買って行かれる光景を目の当たりにして、なんだろうと思い見てまわったのであるが、正直なところ私も幾つか買って帰ろうと思った。
 プラザの入り口近くに図書コーナーがあり何人かの人たちが本を返しに来られた。聞くとそれらの本は、貸し出し無料で元はゴミだったという。不思議な場所である。そこは役目を終えた物たちが、新しい命をもらい蘇(よみがえ)る場所である。
 捨てられた物がリメークされ新しい物に蘇る?ものづくり教室?も開催されている。ゴミとは、誰かが勝手に決めただけで、本当は資源なのだとこの場所は教えてくれた。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)

■歴史建築物の延命  掲載日2005.09.06

 NPOまちづくり研究所が手掛けている佐賀市与賀町の山口亮一記念館の第一期改修が、九月半ばに完了する。
 長い間放置され、壊れかけた記念館の縁側回りやシロアリ被害で立ち入れなかった床回りを全面改修し、倒れていた建物をできる範囲で垂直に戻す作業など、かなり大掛かりなものであった。
 ベニア板で塞(ふさ)がれていた壁を外すと、絵の描かれた一枚板の板戸が突然現れたり、竹の皮と和紙で作られた建具の引き手に感心したり、発見や驚きの連続でもあった。
 玄関扉を広く開放できるようにしたり、茅葺(かやぶ)きの小屋裏を光でライトアップしたり、随所に工夫も行った。  この建物は、二百五十年間人を受け入れ、時代を生きてきた歴史を建物の随所に深く刻み込んでいる。こんな場所こそが地域づくりの拠点として最もふさわしいのであろう。
 今後は、地域に残る歴史建築物や地域らしさをそこに住む地域の人たちがアピールし、存続させていかないと地域自体が本当に消えてしまう可能性が大きいことも事実である。
 十月に入ってオープンハウスを兼ねた「まちづくり座談会」や「ものづくりワークショップ」等が、この山口亮一記念館で計画されている。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)

■新しい「公共」の概念  掲載日2005.10.04

 いままで行政が担っていた「公共」という考えが変わってきている。少子高齢化が進む一方で、地域のコミュニケーションの希薄化が進行している。
 その中で、高齢者も子どもも孤立し、行政のサービスではコストが掛かり、きめの細かい対応も難しいという現状がある。
 ここ最近、地域の問題は地域で解決しようとする動きが出てきた。「ご近所の底力」といったTV番組もあったりする。地域の人たちが集まり自分たちの生活を良くするために話し合い、問題解決に動き出す。それはまさに「市民活動」である。
 市民活動には「地縁型」と「志縁型」があり、地縁型市民活動の中心は、「公民館」単位がふさわしいといわれている。しかし、行政の教育委員会に属する公民館は、市民活動で利用するには許可が必要となり、さまざまな制限が課せられる。
 市民が集まれる祭日や夜間利用に対して、管理運営上の問題が生じるのも確かである。公園や道路についても同様である。公園や道路、河川、公民館等、いわゆる公共施設はその地域に住む市民の手できれいに保ち、有効に利用し守っていくことが基本なのであろう。そうしたことが市民と築く新しい「公共」という概念につながるのである。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)