佐賀新聞掲載コラム日だまり-P5

■フォーラム・まちへ集合  掲載日2004.11.16

中心市街地が衰退していく。資金を投入し商業施設や公共施設、駐車場などを整備するだけでは、まちは活性化しないことをこのまちは、「まちづくり佐賀」の破綻(はたん)によって学んだ。
まちづくりは、施設造りではなく、魅力創(づく)りから発しないと始まらない。魅力創りをするのは人、面白い人たちが集まれば何かが始まる。そんな実験的な試みが、このまちで始まろうとしている。
十一月二十、二十一日、佐賀市の願正寺を拠点にまちづくりフォーラムが開催される。今まで、点で活動していたまちづくり六団体がこの二日間集まり、市民を巻き込んでの六つのイベントを同時に行う試みだ。参加者は、それぞれのまちづくり団体の紹介とイベントの内容を聞き、気に入ったイベントに参加する。そしてまちの再生について考えていただこう、というフォーラムである。
私たちまちづくり研究所は、中心市街地を緑化しようという試みで、空き地に大きな土の創作花壇をワークショップで製作しようと準備をしている。中心市街地に力強いアートを点在させ、まちの空間に変化を与えようという試みである。二十、二十一日は、佐賀のまちへ集合。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)

■人権とまちづくり  掲載日2004.12.14

人権フェスタが四日諸富町で行われた。その中で人権ワークショップが、まちづくり、子供、福祉、女性の四つのテーマに分かれて行われ、私は、そのうちの一つのまちづくりを担当した。参加自由で、留学生を含む学生、社会人、主婦、NPO関係者らさまざまななジャンル、年齢の人たちが集まり、まちに必要な交通手段、人が集う場所、人が健康に暮らせる環境、地域の持つ魅力(歴史、自然)と大きく四つの項目を出し、話し合った。
例えば「佐賀での移動手段は、中心市街地を除き、ほとんどが車。しかし高齢者や障害者の多くは身近に移動手段がなく、簡単にはまちへ出られない。高齢者も障害者も、元気な人は普通にまちへ出かけ、会話し、買い物をしたり、食事をしたり、おしゃれを楽しむのは当たり前のこと」 宅配サービスが充実したこともあって、まちに出なくて暮らせるようになり、高齢者や障害者がますます社会から孤立している現実がある。宅配出前サービスよりコミュニティーバス整備が大切なのでないだろうかといったような内容だ。
市民が話し合い、人権やまちについて考えることの大切さを感じた。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)

■古民家と近未来住宅  掲載日2005.01.25

 昨年の暮れ、築二百年を超える古民家の調査をする機会をいただいた。江戸時代後期に建てられた貴重な建物である。
 古民家は、地盤面と接する個所をできるだけ少なくするよう床下に丸太の梁(はり)を通し、少ない床束(ゆかつか)で受けてある。現在の木造在来工法が、コンクリート基礎を地面に固定し、ボルトで地盤面と建物を一体になるように建っているとすれば、まさに建物が宙に浮くように地盤の上に座っている感じである。
 それは、現在の建物が、電線や水道、ガスなどの重装備なライフラインでがんじがらめに縛られていることを思うと、何と粋で、クールな技法であっただろうか。自然環境に逆らわずに共存する技を、伝統技術として受け継いできた当時の職人の心意気に触れたような感動を覚えた。
 近い将来、太陽光発電での蓄電、生活排水の浄化循環などの技術が進めば、重装備なライフラインに縛られない自然と共存可能な住空間が出現するであろう。そんな二百年以上もつ、サスティナブルな(持続可能な)近未来の住宅の在り方をあらためてこの古民家に教えられたような気がした。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)

■オランダの街  掲載日2005.02.22

 先月一週間ほどオランダへ出かける機会があった。回ったのは、アムステルダム、ユトレヒト、ロッテルダムである。
 佐賀と同じ平たんな土地柄ということもあって、自転車の多い街だ。大通りには、車道と歩道の間に独立した二?ほどの自転車道が確保されていて、至る所に屋根のない駐輪スペースが設置されている。皆、寒い中、ほおを赤くしながらスピードを出し走っているのが印象的だった。
 その街並みは、生活感が表にない美しい街並みといえる。窓やバルコニーに洗濯物や布団を干してある光景はなく、ごみ袋や遊具など生活のにおいのする物が、見える場所にない。建物も同様、換気扇のカバーや空調の室外機、配線、配管類など生活に必要な設備類が一切外観に出ていない。
 設備のシステムはともかく、そこで生活する日本人は、朝食の準備で煮炊きをし、朝からにおいを発することで、周囲から嫌がられるというお国柄である。私たちにとって生活するには少し窮屈かもしれないが、外から見ると美しいと感じる街並みである。宗教上のこともあって休日や夜中に懸命に働く人はほとんどいない。そこは豊かな街だと思えた。

(アルフデザイン代表 三原宏樹)