佐賀新聞掲載コラム日だまり-P17


■幕末佐賀遺産を見るまち歩き  掲載日2009.01.27

   1月18日、佐賀から長崎を見ようということで30名の人達が長崎から大型バスで佐賀に来られた。長崎の人達の佐賀まち歩き企画だ。
 佐賀城本丸歴史資料館から、バスで長崎街道の八戸入り口へ、街道を歩き、築地反射炉跡、多布施反射炉跡、佐賀藩科学技術研究所跡(精煉方跡)を見て歩き、最後はバスで川副町の佐野常民記念館と三重津海軍所跡を見学するコース。このコースは、昨年に世界遺産暫定リスト入りした「九州・山口の近代化産業遺産群」へ幕末佐賀遺産を追加登録しようと現在市民と行政が取組んでいる場所を見学するものである。
 本丸歴史資料館のボランテアガイドにまち歩きガイドまでお願いし一緒に同行させて頂いた。長崎街道沿いには実際に歩いて見ないと分らない歴史的遺産が沢山残っている。
 参加者の一人は、街道沿い真覚寺境内にある刀鍛冶の火入れ水槽の水舟を見て、野ざらしで置い有る事に驚いていた。佐賀に住む私達が、佐賀の誇れる歴史や地域に残っている遺産の場所やその重要さについて、再認識する必要を長崎の人を通じ痛烈に感じた。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)

■佐賀藩幕末遺産を遮る道路計画! 掲載日2008.12.16

   今年9月、九州山口の近代化産業遺産群が世界遺産暫定リスト入りした。同時に審査の結果、現在、近代化産業遺産群に入ってない佐賀長崎に残る造船及び製鉄に関わる遺産群も文化財指定ある無しに関わらず地中に埋没しているものも含み、今回の遺産群に追加を検討するよう文化庁より県に対して申入れが送られている。
 これは三重津海軍所跡、製錬方、反射炉等の佐賀藩幕末遺産と佐賀藩が長崎に築いた神ノ島台場の事である。県から唯一、唐津に残る高取邸を遺産群として出されてるが佐賀藩に関わるものは出ていない。
 重大なのは、日本で最初にヨーロッパから蒸気船や大砲を持込み研究したとされる佐賀藩遺跡三重津海軍所跡の真上に湾岸道路が現在計画されている事だ。
 今、多くの市民団体が手を繋ぎ佐賀が元気になる事を目的に佐賀藩の近代化産業遺産が世界遺産に登るよう運動を広げている。来年2月には、ユネスコ世界遺産産業遺産部門の事務局長スミス氏を佐賀に迎え、佐賀藩幕末遺産の重要性を語って頂くシンポジウムが市民の手で企画されている。はたして市民の声は何処迄届くだろうか。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)

■文化の破壊と社会的罪  掲載日2008.11.18

   最近、新聞報道で地域に残る歴史的建造物の取壊しが連続して伝えられる。地域に残る大切な文化を伝承するには知恵が必要だ。それは、思いつきでは無く知識や技術に裏付けされたもので無ければならない。
 数年前オランダを訪れた。ユトレヒト景観保存地区で煉瓦積みの古い建造物に入ると外から見えないよう内部は、鉄骨フレームで補強されている。強化硝子の床と硝子の間仕切、ステンレスの細い枠で構成された透明な空間を体験した覚えがある。数百年を経た煉瓦の素材と、それを隠さない現代の素材で構成された豊かな空間だった。
 古い日本の木造建築も世界に誇れる美しい日本文化だ。100年近く経った建造物の木材は、お茶席の炉縁に使える程、頑強で狂いのでない貴重な資源である。
 そんな貴重な地域の財産を守る事では無く、破壊する事にお金を使い多くの廃棄物とCO2を排出をしている地域社会がある。壊れかけた建造物でも知恵をだし、現代の技術を駆使すれば再生できる。しかし修復の為の知恵、その後の活用の為の知恵を出そうとしない。
それは地域文化を破壊する社会的罪でもある。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)

■ 協働     掲載日2008.10.21

協働という言葉を最近よく聞くようになった。私の所属する市民活動組織でも行政から委託を受け協働事業を行っている。
 協働とは、市民活動組織と行政や企業等が協力しあいながら役割分担を行い市民サービスや社会事業を進める方法だ。実際は、なかなか難しい。
 市民活動組織の形態は並列でありメンバーは平等の意識で繋がっている。人を繋ぐもの、動かすものは少しでも社会の状況を良くしたいという志と状況判断できる情報の共有である。
 行政や企業等では縦の繋がりにより指示が上から下に流れ、各々に責務を負っている。情報の伝達がなくても命令で事業は進んでいく。
 市民活動組織との協働事業ではそうはいかない。基本的に命令系統で動く事業ではなくなり自然発生的な事業形態をとるからだ。市民活動組織特有の並列な関係で志を持つ担い手に責務を託して行くことで協働事業は進められる。
 閉鎖的な権力構造なくすため情報が共有された中、志しで集る市民活動組織による自発的で心のこもった市民サービスや社会事業を時代は要求しているのだろう。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)