佐賀新聞掲載コラム日だまり-P14

■佐賀から見えたもの  掲載日2008.01.22

 昨年十二月、九州伝承遺産ネットワークシンポジウムが佐賀市内の三会場で開催された。
 九州各県のまちづくり市民活動家が佐賀に集合し、佐嘉神社を起点に願正寺、柳町と中心街を歩いた。過去二回の同シンポジウムで歴史的建造物を実際に使用し開催したのは佐賀が最初である。参加者の多くが佐賀の中心市街地に古い建物がまだたくさん残っている状況に驚きと興味を持たれた。
 県庁所在地の市中心部に、戦前からある古い建物が現在の街並の中に隠されているのが非常に面白いというのである。住んでいる私たちが当然のように思っている昔からの景色は、この場所の歴史と文化を物語り県外の人たちからは、魅力にあふれて映るらしい。
 古いものを壊し新しくした建物もたくさん存在するが、古いものを活(い)かし歴史を感じさせる景色の方が、今では斬新で魅力的に映る。最近、観光という意識が変わり比較的近くで、心安らぐ自分の場所を求める現在の社会状況がある。  懐かしい豊かな景色を残している佐賀市中心部が、福岡都市部など県外で暮らす多くの人たちにホスピタリティを提供できるかどうかで佐賀の将来は決まるような気がした。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)

■地球環境と生命力  掲載日2007.12.11

 環境・健康フェスタが先月、佐賀市エコプラザで行われた。そのプログラムの中で吉田俊道氏による生ごみを使った有機土と有機野菜の作り方講習会が開かれた。
 私たちは、土の恵みを食し生きている。現在市場に出回っている多くの農作物は、カテキン、リコピン、アントシアンなどの抗酸化物質含有量が五十年前に比べ十分の一程度に減少しているという。このことは、生命力に乏しいものを食している私たちの体の抵抗力が弱り、薬で環境を調整しようとする悪循環の原因となっている。
 生命力溢(あふ)れる抗酸化物質を多く含む野菜には病害虫もつかないという。今の時期、路上に溢れる落葉も生ごみも、生命力の源なのだ。
 生ごみを腐敗させずにうまく土に戻し循環させることは、地球環境を守り地球温暖化を防ぐことで、それはそのまま食育と繋(つな)がる。生命力に溢れた土からの恵みを食することが私たちの命の原点なのだ。土と接し土と暮らす地方での生活は本来、生命力に溢れる人間らしい暮らし方なのであろう。地球環境と私たちの生命力は決して分けて考えられないということをあらためて認識させられた興味深い話だった。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)

■フェ−トン号事件から約200年 掲載日2007.11.13

 産業革命が起ったのが18世紀後半、フェ−トン号事件が1808年に起る。当時ヨーロッパでは植民地政策行が行なわれ、1841年アヘン戦争が起こった。
 世界情勢激動の1815年に鍋島直正は生まれる。彼は、フェ−トン号事件や藩の財政難で危機感を植え付けられ、独自の世界観を持ち経営的感覚とこれから日本の進むべきビジョンを適格に捉えていたと言う。そして幕末の佐賀は世界屈指の近代的感覚を持つ場所となった。
 フェ−トン号事件から約200年の時を経た現在、市場経済の風が日本中を支配する中、佐賀は取残された。しかし現在の佐賀こそ、22世紀のサスティナブルな社会を目指す環境重視社会では、先進的な場所なのかもしれない。
 そんなテーマで伝承遺産とこれからの社会を考える九州伝承遺産ネットワークシンポジウムが12月2日、10:00佐賀神社記念館、13:30願正寺、15:30旧古賀家と、佐賀中心市街を移動しながら県外の人も招き行なわれる。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)

■エネルギー大量消費時代の終り 掲載日2007.10.16  エネルギーをできるだけ消費せず暮らす知恵を私達はもう一度身につける必要がある。
 世の中が便利になり、ものを消費するだけで生活できるようになった。仮に人を、主にエネルギーを消費するだけの人と、自ら考え行動しエネルギーを発信する人に分類すると、前者の方が明らかに地球環境には優しくない。
 私食べる人あなた作る人と言ったコピーが昔流行った。食べるだけの人より作る人の方が遥かに創造的で創意工夫が求められる。
 現在、佐賀県地球温暖化防止活動推進センターから「食から始まる地球温暖化防止コンテスト」でアイデアが募集されている。食を通じ環境について皆で考えるための試みだ。マイバック・マイ箸・マイカップ運動、生ゴミを減らし地産地消を実践し熱源や水を無駄に使わない等の様々な事が考えられる。
 今、健康な人達に社会が求めているのは、地球環境に負荷を与えず自ら考えエネルギーを発し地球温暖化に歯止めをかける事だ。
 すでに社会は大量エネルギー消費時代から環境に負荷をかけずに生きていく事が求められる時代へと移項した。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)