佐賀新聞掲載コラム日だまり-P13

■九州伝承遺産シンポ  掲載日2007.06.26

 地域の文化遺産を守り育てている情熱的な人たちが各地にたくさん存在する。九州伝承遺産ネットワークは、それらの人々やグループの連携を図るため結成された。今年三月、同ネットワークによる第一回シンポジウムが長崎で開催され、地域連携による郷土の文化遺産の保存・活用を推進し、伝承遺産を未来に受け継いでいくことが提唱された。
 第二回シンポジウムが七月十五日(日)の午後二時から、熊本市の旧城下町を移動しながら行われる。大正八年建造の旧第一銀行熊本支店跡から始まり、町歩き後に古町と新町でミニセッションが行われる予定だ。
 熊本での歴史的な環境を体験しながら、「長崎さるく博と伝承遺産について」や「佐賀の山口亮一旧宅延命プログラム」などが紹介されることになっている。参加無料で九州全域から地域活動に携わる人たちが集まり伝承遺産の保存利活用の手法、観光と地域おこしの事例を体験しながら学び、同時にネットワークを広げようとする試みである。外から自分たちの地域活動を眺めるには絶好の機会となるであろう。
 「九州伝承遺産ネットワークシンポジウムin熊本」に佐賀の人にもぜひ参加してほしい。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)

■世界遺産と佐賀  掲載日2007.07.24

 幕末以降、半世紀の間に急激な経済成長を果たし、アジアの奇蹟(きせき)と言われた日本。その産業技術の発展をストーリーとしてとらえ、九州、山口に残る産業遺産とその生活背景を、一連の鎖のように繋(つな)ぎ合わせ「世界遺産」として登録しようとする動きがあり、国内外の研究者から注目されている。
 そんな中、九州伝承遺産ネットワークが昨年組織化され、長崎を皮切りに、七月十五日には熊本で二回目のシンポジウムが開催された。現在その遺産群として十三の施設がリストアップされているが、残念ながら佐賀からは唐津の高取邸一件のみである。
 佐賀藩が日本の近代化に果たした役割の大きさは言うまでもなく、フルベッキを招いた佐賀藩の致遠館から日本の近代化が始まったように、数多くのストーリーがこの佐賀から生まれている。多布施反射炉や鉄道模型など、日本の近代化に寄与した遺産として誇れるものをたくさん有する佐賀は、もっと歴史文化を掘り起こして全世界に発信するべきである。
 世界遺産としてアピールするためには地元の人たちの思いが絶対条件だ。佐賀をこの世界遺産の中心にするために、地域の輪を広げることができないだろうかと強く感じた。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)

■佐賀の自慢できるもの  掲載日2007.08.21

 県外に出て仕事する機会が多く、よく佐賀の事を聞かれる。そんな時、必ず佐賀を自慢するようにしている。長崎、熊本、福岡の間にあり交通の便が良い事、美しい自然や原風景がまだ多く残っている事、人口密度も控えめで生活しやすく研究をしたり物事を深く考え仕事をするには最適の所である事、最後に美味(おい)しいものがたくさんある事を話す。
 最近のマイブームは、佐賀の和菓子である。ショートケーキ、洋菓子がスタンダードとなっている昨今、演出次第では和菓子の方が斬新に感じることもあり、佐賀の和菓子を県外へ持っていくと大変喜ばれる。そして長崎街道がシュガーロードとして、日本近代菓子文化の発祥のルーツとなっていることも言い添える。
 手土産として佐賀の食べ物は、佐賀を語るときに外せないコミュニケーションツールだと思う。佐賀を象徴する、自慢できる取って置きの一品をいつも探し求めている。そして自分も佐賀に住んでいることを自慢し、良い仕事ができる理由がそこにあると説明する。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)

■地域暮らしとその足元  掲載日2007.9.18

 長い年月を経てきた古い建造物は、多くの人にとって価値のない廃棄物の集積に映るかもしれない。しかしそこに込められている歴史や物語に触れた途端、それは先人が残してくれた重要な文化遺産となる。
 地域の持っている独自の歴史や物語性は、残念ながら一部の限られた人たち、研究者らの中でしか語り継がれていないように思われる。
 地域を誇りに思い街を元気にしていくためには、郷土歴史文化その物語を私たち一般市民も知っておくことが必要だ。
 古い建築物を改修し延命して行くことは、新築に比べ温室効果ガスの発生を抑え、地球温暖化防止活動に繋(つな)がる。郷土の歴史文化を学ぶことは、地域活性化のためのまちづくり活動に繋がる。
 私たちの生活は、行政のように縦割りではなく、衣食住のすべてが関連しながら私たちの身体、健康状態にまで影響している。
 地域で生活をしている私たちが元気になるために自らの足元、暮らしている場所を知り、暮らし方を眺め、日本の現状や地球環境を考え、もう一度自分の生き方を見つめ直すことが必要かもしれない。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)