佐賀新聞掲載コラム日だまり-P11

■協働化テスト  掲載日2006.10.24

 佐賀県が実施しようとしている施策に協働化テストというのがある。今年中に行政が行っているすべての事業を公開し、官民を問わず平等に競争し、よりきめの細かい行政サービスを提供していこうという試みである。
 そんなことが九日にアバンセで行われた佐賀県CSO推進機構主催の協働化テストフォーラムで発表された。
 今まで行政内部機密のように扱われていたさまざまな事業と、その有効性や必要性などの評価を一般社会の目で見た物差しで測り、事業の見直しや民間委託に移行していくための第一歩であるらしい。例えば、行政が所有している施設の中で、資格も経験も有しない素人職員が管理運営しているといった事業があったなら、それを経験豊富な有資格者のいる民間団体や企業に将来のビジョンやサービスの在り方を問いながら、コスト意識を持って運営を委託するということであろう。
 そのようなことを、施設管理だけにとどまらず、教育、まちづくり、福祉など、あらゆる分野の事業に当てはめていこうとする試みである。まさに全国に先駆けての画期的な取り組みだ。このような取り組みが佐賀方式として、日本の社会システム構築での常識として定着することも含め大いに期待したい。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)

  ■佐賀のグランドデザイン  掲載日2006.11.21

 「場所の力」という言葉がある。「パブリックヒストリーとしての都市景観」という副題で、現代アメリカ都市について書かれた本の日本語タイトルである。
 「場所の力」とは、人々の記憶の中にある風景だとか、歴史や文化活動の舞台として存在した場所にまつわる事実そのものであろう。地域にかかわる人たちの思いの中で、そのようなことを大切に思うか無視するかで、あまりに違った結果を後世に残すことになる。
 エスプラッツは長崎街道の痕跡を跡形もなく破壊した。山口亮一旧宅は、市民の手で公共の場として蘇(よみがえ)らせた。中央と地方の経済格差が広がり、市町村合併で隣同士になってしまった福岡市が長崎新幹線整備でもっと近くなる。私が怖いと思うのは、佐賀が佐賀としての存在感を喪失してしまっても暮らしていくのに誰も困らないという現状である。
 十二月二日(土)の午後一時半から願正寺にてTMO佐賀とNPOまちづくり研究所が中心になり、佐賀中心地再生シンポジウムが行われる。佐賀という存在を次世代に継承していくのに一市民として何ができるのか、行政がなすべきことは何か、将来の佐賀の姿をどう考えるかを問う市民主導のイベントである。できるだけ多くの人に参加いただき共に考えてほしい。り出そうとしているのだろうかと疑いたくなる昨今である。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)

■企業城下町  掲載日2006.12.19

 企業城下町はいつか必ず滅びる! 先日、願正寺で行われた中心地再生シンポジウムに参加頂いた佐賀大学地域学歴史文化研究センター長、宮島敬一教授の言葉である。佐賀の場合、その企業は行政に該当し、行政主導の城下町を一度壊さないと再生はあり得ないという内容だった。
 シンポジウムは二部構成で、一部では、文化遺産と水辺から考える100年後の佐賀というタイトルで佐賀のグランドデザイン案を発表し、それを受けてのパネルディスカッションでのことである。
 時代とともに生活スタイルもその環境も目まぐるしく変化し、誰にも止めることはできない。そんな中で、地域の人たちが変えたくない風景を決め、残していく活動を積極的に行うこと、何を残すか=グランドデザインだとし、ここでは佐賀の水系と歴史的環境資源(歴史的建造物を含めた護岸、生け垣など時代を継承する景色を構成するもの)だとしている。
 住民の知らないうちに西日本一熾烈(しれつ)な流通競争の舞台に立たされた佐賀市が今後どうなるのか、佐賀に住む人たちにその意識と気付きの必要を今、いや応なしに迫られている。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)

■ベンチと椅子のワークショップ  掲載日2007.01.18

 先日、旧杵島炭鉱変電所跡の煉瓦館にてベンチと椅子(いす)を製作するワークショップを開催した。今回は県の森林組合にお願いし県産材の杉丸太端材を無償で提供していただき、歴史的遺産の煉瓦造り建造物の中が、杉の香りで溢(あふ)れた。
 ジャンルも年齢も違う多くの人たちが同じ目的と時間を共有した。ワークショップ参加者各自の居る場所で、なんとなく作業分担が確立し、作業は流れはじめる。やがて椅子が組み上がり、座面の輪切り丸太の年輪の上に座ってみる。板材の背もたれで背中を伸す。心地よい。そしてベンチが組み上がる。板材の縁を捕らえる複数の丸太の足が生き物のように見える。面白い。これも良い。
 開催に至るまでは毎回後悔の連続なのだが、開催した後に心に残る大きな収穫がある。作業で体が疲れたのは確かだが、それ以上に参加者から多くのエネルギーを頂き、心が元気になる。
 終了時に誰かが言った。今日のこの作業を銭に直すと相当なものだろうと。何もないところから、誰かの呼び掛けで、心が繋(つな)がり、エネルギーを放ち、物が生まれ感動する。ワークショップとは、そんな物づくり地域づくりの原点なのだろう。
(アルフデザイン代表 三原宏樹)